2016年03月31日
Ⅷ.SDGsと他の国際枠組・条約 (一部)
●生物多様性条約・愛知目標
地球上すべての生命の存立基盤であり、各地域の豊かな文化の根源でもある生物多様性が、世界各地で危機に瀕している。生物多様性は、生態系・種・遺伝子の3つのレベルの多様性を対象としているが、例えば、人類は、種の絶滅速度をこれまでの地球の歴史の1000倍に加速させていると言われている。
生物多様性問題に関する国際的取組みは、生物多様性条約の下で行われてきた。2010年に愛知県で開催されたCOP10では、2011年から2020年(一部は2015年)までの具体的目標を定めた愛知目標などが採択された。
SDGsではゴール14(海洋・海洋資源)とゴール15(陸域生態系)において生物多様性を直接的に取り上げている。さらに、他のゴールの中のターゲットにも生物多様性と関連するものが確認できる(例えば、ターゲット2.5、6.6など)。SDGsのターゲットは、愛知目標の一部を含んでおり、両者の整合性が図られていることが分かる。SDGsの実施が愛知目標の中間年に開始することもあり、これを機に愛知目標達成に向けた取組みもさらに加速することが期待されている。また、愛知目標には含まれていない生物多様性に関するターゲットも、SDGsには含まれており、生物多様性保全に取組む際に、SDGsに着目・実施を推進することも重要である。
●気候変動枠組条約
気候変動はSDGsのゴール13を中心に盛り込まれている。最新の科学的知見を提供する「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」は、第5次評価報告書において、気候システムの温暖化には疑う余地がなく、温暖化の程度が増大していくと、人々や生態系にとって深刻で広範囲にわたる不可逆的な影響を生じる可能性が高まると述べている。しかし、差し迫った脅威であるにもかかわらず、これまでの気候変動交渉では、効果的な適応策や2℃目標の達成を実現するような合意はできていない。各国が野心的な削減目標を掲げられない理由の一つは、温室効果ガス削減はエネルギー政策・需給構造と密接に関連しており、工場の海外移転等を招く事態ともなれば、経済不況や失業・貧困の拡大につながる可能性があるためである。
一方、SDGsでは温室効果ガス削減と密接に関連するエネルギーがゴール7で掲げられ、潘基文国連事務総長により提起された「万人のための持続可能なエネルギー(SE4ALL)」に沿う形で、エネルギーアクセス、エネルギー効率、再生可能エネルギーの推進が各ターゲットに記載された。また、ゴール11はレジリエントな都市・人間居住であり、適応策と密接に関わっている。SDGsを効果的に進めることが、気候変動対応にブレークスルーを与える可能性がある。
●持続可能な消費と生産に関する10年枠組み
持続可能な消費生産(SCP)はゴール12で掲げられた。SCPは、資源採取段階から廃棄・リサイクルまで含み、環境だけでなく経済や社会のあり方とも密接に関連している。例えば、資源採取における生態系保全・公害防止、消費生産行動における低炭素配慮、労働における人権・健康影響配慮というように、SCPを入口とする取組の波及効果は広範であり、推進する意義は大きい。
ゴール12の各ターゲットでは、持続可能な資源管理、フードロス、廃棄物対策や3R、企業の環境情報開示等が挙げられている。日本は環境政策の中で様々に取組んでおり、高い技術力と消費者・事業者を巻き込んだ国民キャンペーンも既に存在する。
SCPを推進する国際枠組として、リオ+20で採択された「持続可能な消費と生産に関する10年枠組み(10YFP)」がある。10YFPでは、①消費者情報、②ライフスタイルと教育、③公共調達、④建築・建設、⑤観光、⑥食品システムに関する6プログラムがあり(日本は②の共同リード国)、より焦点を絞った取組が行われ、独自の評価指標も整備されつつある。
SCPは入口として入りやすく様々な分野への展開可能性を秘めている。一方で、10YFPのような国際動向を踏まえ推進することが、効率的な取組みと進捗評価に繋がっていくと考えられる。