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2012年06月19日

グリーンエコノミーフォーラム・メールニュースvol.1「Rio+20の会場から」をリリース

いよいよ6月20~22日(金曜日)までの3日間、ブラジルのリオデジャネイロにて、「国連持続可能な開発会議(リオ+20)」が開催されます。その前日となる今日、リオ+20成果文書が仮採択されました。

グリーンエコノミーフォーラムのメンバーは6月12日に現地に入り、13~15日に開催された第三回準備会合および16日からの事前会議にて、交渉状況をウォッチしてきました。また、この期間、リオ+20の展示会場にあるジャパンパビリオンやリオ+20に合わせて開催されているピープルズサミットにおいて、グリーンエコノミーフォーラムのメンバーが積極的に講演等を行っています。

今回のメールニュースでは、会場の雰囲気、交渉の進展と仮採択内容、リオ+20に関する所感を現地よりお伝えしたいと思います。

左)メジャーグループミーティングの様子。右)記者ブリーフィングの様子。交渉の進捗状況やNGOの視点を紹介。

左)プレナリーセッション直前の様子。右)ジャパンパビリオンにてシンポジウム直後の一枚。

左)アスリートパーク前でのパフォーマー。「Let’s save the earth!」と呼び掛け、とても陽気なパフォーマーだった。右)持続可能な社会に向け、沢山の人々の思いが込められているメッセージ。

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*グリーンエコノミーフォーラムは、NGO・事業者・研究者・政策担当者の多様なセクターの連携による、環境・社会問題解決に資す経済推進のためのフォーラムです。

*グリーンエコノミーフォーラムでは、交渉の論点や各国の交渉ポジションを記載したレポートを公表しています。より詳しくご覧になりたい方は是非ご参照ください。

http://geforum.net/archives/325

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目次

1 交渉の進展と仮採択内容

(1)本会合に至る交渉プロセス

(2)13~19日における交渉の論点及び仮採択内容

2 所感

(1)「いま「リオ+20」の夢と現実を見ている!~会議の終盤を前にして~」古沢 広祐

(2)「リオ+20は企業にどのような影響を与えるのでしょうか」山口 智彦

(3)「20年間の状況変化と、雇用・社会的保護・開発に関する合意進展」足立 治郎

3 編集後記

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1. 交渉の進展と仮採択内容

(1)本会合に至る交渉プロセス

◆ニューヨーク~リオデジャネイロに至る交渉プロセス

リオ+20成果文書ゼロドラフトが1月10日に発表された後、1月25~27日、3月19~27日、4月23日~5月4日、5月29日~6月2日と、ニューヨークの国連本部にて交渉が重ねられてきた。4~5月の交渉では、交渉テキストの1~4章を対象とするワーキンググループ2(WG2)と、5・6章を対象とするワーキンググループ1(WG1)に交渉グループが分けられた。5月29日~6月2日に開催された非公式会合では、交渉の進展速度を上げるため、2つのWGの下に、さらに複数の小グループを設置し交渉が進められた。

◆3rd Preparatory Committee Meeting (第三回準備会合)における交渉プロセス

6月13~15日に開催された3rd Preparatory Committee Meeting (第三回準備会合)では、前回のニューヨークでの非公式会合に引き続き、小グループによる交渉が行われ、各小グループのファシリテートもニューヨークでの会合と同じ人物(議長に指名された各国交渉官)が務めた。

WG2の小グループは交渉テキストの、(1)1章のビジョン・2章の政治的コミットメントの更新、(2)3章のグリーンエコノミー、(3)4章の制度枠組み、をそれぞれ対象とする3グループで構成された。また、WG1は、5章Aの持続可能な消費と生産・水・気候変動や、災害・雇用など特定テーマに関する7つの小グループと、5章Bの持続可能な開発目標(SDGs)および6章の実施手段(MOI)を対象とするグループの合計8グループで構成された。MOIの中にはファイナンス・技術移転・キャパシティビルディング・貿易などが含まれる。交渉自体は、WG2の3グループとWG1の8つのうちの3グループの合計6グループが平行する形で進行した。各グループにより、進行方法や進捗具合、テキストのアップデートの頻度は異なった。また、毎日20~22時頃に各WGが全体会合を開いて、小グループの報告機会を設けた。

13日の準備会合開会時において、交渉テキストで合意されたのは70パラグラフ・残り259パラグラフであったのが、15日の準備会合閉会時において、合意は116パラグラフ・残り199パラグラフとなった。

◆Pre-Conference Informal Consultations(非公式協議によるリオ+20事前会議)のプロセス

16日、進行をホスト国であるブラジル政府が引き継ぎ、これまでの交渉を踏まえたブラジル政府案が発表された。16日は各国・グループ内の新テキストの理解・対応方針の協議に時間が費やされ、夜に開かれた全体会合では、新テキストに対する各国の見解が述べられた(大まかには、先進国が不満を、途上国が支持を表明)。

実質的な交渉が再開された17日より、特に意見対立が大きいと思われるテーマ(1・2章、グリーンエコノミー、制度枠組み、海洋、SDGs、MOI)に絞り、各国が譲れない部分について協議が行われた。進行はこれまでの交渉と異なり、議長が各国同士での協議を促し、そこで意見集約を図る試みが行われた。また、これらの交渉の裏では、例えばエネルギーについて、少数の国による協議が行われた。

19日朝、議長国ブラジルによる再提案が示された。その修正のための機会が設けられないまま12時過ぎからの全体会議にてリオ+20成果文書として仮採択された。その後、各国は仮採択文書に対する見解を述べたが、ブラジル政府への感謝と称賛に加え、先進国・途上国双方から少なからず不満の声も聞かれた。

以下では、第三回準備会合および事前会議における、グリーンエコノミー、企業のレポーティング、化石燃料補助金、海洋、持続可能な交通、持続可能な都市、SDGs、ファイナンス、技術、貿易について交渉の論点及び仮採択内容を報告する。 (小野田真二)

(2)13~19日における交渉の論点及び仮採択内容

◆グリーンエコノミー

グリーンエコノミーの交渉では、グリーンエコノミーを進めるにあたっての原則について集中的に議論が行われ、先進国と途上国の調整が難航した。途上国の主な主張は、1)共通だが差異ある責任の原則の強調、2)援助と技術移転の拡大、3)先進国が生産・消費パターンの変革に取組むこと、等であった。先進国はいずれの項目もグリーンエコノミー関連条項の中で言及することに反対し、議論は平行線をたどった。

16日には、議長国ブラジル提案が出され、上記1や3など先進国が優先的に取り組む原則の表現は削除された。また、社会・環境のコストの意思決定への反映や持続可能な調達(グリーン購入など)に関する国際枠組みの設置などの提案は退けられた。交渉は、グリーンエコノミーに関する国際的な知識共有プラットフォームなどの能力開発メカニズムを新規設置するか否かなど、残されていた論点に議論を移した。

17日の交渉では、能力開発メカニズムについて、アメリカが新たなテキストを発表。G77/中国やEU等と積極的に交渉し意見をまとめた。新規メカニズム設置の提案を退け、既存メカニズム強化で合意することとなった。

19日に発表・仮採択された議長国ブラジルによる成果文書再提案では、グリーンエコノミーは持続可能な開発を実現するための重要なツールと位置付けたものの、グリーンエコノミー政策の実施を奨励するとの表現に留まり、各国における政策実施は各国の自主性に任せることとなった。グリーンエコノミー関連条項における新たな具体策の合意は、ほぼ喪失した。(田辺有輝・岩切広美)

◆企業のレポーティング

企業の持続可能性情報を企業の報告サイクルに含めること、及びグッド・プラクティスのモデル開発を奨励することに関して、途上国は先進国が優先的に取り組むべき課題として、世界全体で取り組むことに反対していたが、キャパシティビルディングを条件に態度を軟化させ、双方が合意した。(田辺有輝)

◆化石燃料補助金

化石燃料補助金の撤廃に関する議論は、エネルギーの項目で水面下で交渉が行われていたが、19日のブラジル再提案では、すでに化石燃料補助金の撤廃を約束した国(G20諸国が該当)はその約束を再確認し、まだ約束していない国については、税制改革や補助金撤廃などを呼びかけるとの表現になった。(田辺有輝)

◆海洋

海洋関連の交渉では、1)海洋生態系の健全性・生産性・回復力の維持を何年までに達成するか、2)国連海洋法条約の批准拡大をどこまで強調するか、2)公海上の生態系保護に関する法的措置についての国際交渉開始に合意するかどうか、3)WTOを超えた自主的な漁業補助金の削減の推奨を記載するか、などが主な論点となっていた。漁業補助金については、補助金の削減を推奨することで合意。海洋生態系の健全性・生産性・回復力の維持に関する目標の年限については、水・食料・森林などの年限とともに16日の議長国ブラジル提案で退けられた。19日のブラジル再提案では、公海上の生態系保護の法的措置に関する国際交渉開始は明記されず、国際的措置を含めて対処するとの表現に留まっている。(田辺有輝)

◆持続可能な交通

持続可能な交通の交渉では、1)自動車などのMotorized mobilityの需要削減、2)歩行や自転車などのNon-motorized mobilityの推進、3)先進国から途上国へのサポートの必要性、などが主要な論点となった。1)自動車などのMotorized mobilityの需要削減は、途上国が反対、テキストから削除された。2)歩行や自転車などのNon-motorized mobilityの推進、については途上国もその必要性に同意し、持続可能な都市の中に記載されることとなった。3)先進国から途上国へのサポートの必要性については、先進国が反対。しかし、19日に仮採択されたブラジル再提案に同文言は残されている。 (岸俊介)

◆持続可能な都市

持続可能な都市の交渉では、1)歩行や自転車などのNon-motorized mobilityの推進、2)国連を通じた技術及び資金的な補助の必要性、などが主要な論点となった。G77/中国が主張していた、2)国連を通じた技術及び資金的な補助の必要性、については、EUやUSが反対を表明。議長国ブラジル提案のテキスト及び再提案から同文言は削除された。一方、G77/中国が主張していた、該当する国連の機関からの十分かつ追加的な資金の提供、という文言は残されている。日本が提案していた低炭素都市の推進は、G77/中国からの反対等により、削除する方向で合意した。(岸俊介)

◆持続可能な開発目標(SDGs)

13~15日の準備会合の交渉では、SDGsの検討プロセス、共通だが差異ある責任原則(CBDR)、特定テーマの記載の有無が大きな焦点となった。G77/中国はSDGsの検討プロセスにおいて全ての国の関与が必要と主張。最終的な承認を国連総会が行う事について、米国以外は概ね合意。また、透明性・正統性を持たせるために、利害関係者の関与が必要なことにも概ね合意が得られた。

 それを受け16日に示されたブラジル政府案では、SDGsの検討プロセスに関する新たなテキストが記載された。主な内容(17日午後の議長修正案を含む)は、1)包摂的で透明性ある政府間プロセスとすること、2)国連の5つの地域グループを通じ加盟国によりノミネートされた30人の専門家で構成される運営委員会(a Steering Committee)を第67回国連総会(2012年9月)までに組織、3)委員会は関係するステークホルダーと市民社会・科学コミュニティ・国連システムからの専門家の十分な参加を確保するための様式の開発を含む作業方法を決定すること、4)委員会は、検討および適切な行動のため、持続可能な開発目標の提案を含むレポートを第68回国連総会に提出すること、である。ブラジル政府案に対し当初対立が見られたものの、各国が歩みよりを見せた。ポスト・ミレニアム開発目標(MDGs)との関係では、「ポスト2015の検討プロセスと協調的(coordinated)で整合性が取れている(coherent)必要がある。」とされたブラジル政府案に対し、日本が2つのプロセスが走るような記述になっていると指摘し、SDGsの検討プロセスをポスト2015の検討プロセスに組み込むべきと述べた。CBDRについては、当初ブラジル政府案では、fully respect the Rio Principles, in particular common but differentiated responsibilities とされていたが、G77/中国の強い支持と先進国の強い反対を受け、17日午後の議長修正案 all the Rio Principles, taking into account different national circumstances, capacities and priorities の方向でまとまる兆しを見せた。SDGsの特定テーマの記載については、準備会合のテキストでは残っていたが、ブラジル政府案では記載されなかった。各国意見を踏まえた議長修正案では、特定分野に集中して取り組むべき旨が加えられたが、EU・ノルウェー・スイスはテーマの記載を強く求めた。その一方、G77/中国やメキシコは専門家も関連データもない状態で記載することに強く反対したため、議長は各国同士で協議の上、結論を出すよう促した。

19日朝に発表・仮採択されたブラジル再提案では、SDGsの検討プロセスについては、「運営委員会(a Steering Committee)」を「開かれた作業グループ(an open working group)」と呼び換えた以外は大きな変更はなかった。ポストMDGsとの関係では、日本意見は反映されず、「協調的(coordinated)で整合性が取れている(coherent)必要がある。」の文言がそのまま残った。CBDRについても、17日午後の議長修正案通り記載された。また、特定テーマの記載はなされなかった。(小野田真二)

◆実施手法(MOI):資金、技術、キャパシティビルディング、貿易など

準備会合での実施手法に関する主な論点は以下の通り。資金に関しては、これまで資金に関する様々な議論はなされたが実施に至っていない、ODAの配分に偏りがある、後発開発途上国・アフリカに対する資金が必要である、などの意見が出された。また、G77/中国はSDGs推進のための資金を確実にすることを目指し、プロセスに関する新たな提案を出した。

技術に関しては、技術移転の仕組み、特許権・知的財産権保護の役割と途上国の技術へのアクセスについて大きく意見が分かれた。

キャパシティビルディングについては、気候変動・自然災害などの不可逆的影響に対する脆弱性の観点から効果的な適応戦略に取り組むため、途上国に対する資金・技術・キャパシティビルディングの支援を増加させることを全ての国に求めたパラグラフについて意見対立が見られた。G77/中国は対象を限定することに否定的な見解を示しパラグラフの削除を要求。それに対し、日本は適応戦略のための取組や責任主体の重要性を述べパラグラフ維持を要求したが、結果的に削除の方向性が示された。

貿易に関しては、先進諸国は経済成長・持続可能な発展に対する貿易と市場へのアクセスの重要性を強調。また、貿易保護や貿易を歪める方策への取組みを概ね支持。ナイジェリアは、貿易に影響を与える先進諸国の国内補助金問題を強く指摘した。

16日にブラジル政府が議事を引き継いだ後、ブラジル政府案に対する各国からの意見が出された。その後、ブラジル政府は、各国同士で協議を行い、報告をするように促した。6月18日、ブラジル政府の修正案が出されたのに対し、再び、各国が意見を述べた後、各国間での調整が行われた。意見交換で出された主要な意見と翌19日にブラジル政府より発表・その後仮採択された成果文書再提案について以下に記載する。

資金に関しては、資金の必要性の検証や既存の枠組みの効果・継続性・シナジーを考慮し、新たな取り組みを評価する政府間プロセスの設立や同プロセスにおける持続可能な開発に向けた資金の拠出及び活用を促進する持続可能な資金戦略(financial strategy)のオプションを提案するレポートの作成、南南協力や途上国内および先進国からの追加的な資金の拠出などについての発言が各国の交渉官からなされた。18日の修正案時点で上記の内容はテキストに含まれており、再提案にもそのまま残された。

技術に関しては、途上国への技術移転の必要性、技術の提供者と受給者の双方が利益を得られるように配慮すること、環境配慮型の技術の発展・移行・普及を促進するためのファシリテーションメカニズム等が論点となった。再提案では、同ファシリテーションメカニズムについての記載に加え、途上国への技術移転の必要性とヨハネスブルグで合意された途上国への技術・資金・情報の提供及び知的財産権保護の必要性が新たに加えられた。一方、18日の修正案の時点で記載されていた提供者と受給者の双方が利益を得られるように配慮する文言は19日の文書からは削除された。

キャパシティビルディングに関しては、G77/中国から文言だけでなく、実際に実施することが重要だとの意見が出されたが、文言の追加はなされなかった。

貿易に関しては農作物への補助金撤廃や環境物品・サービスの自由化が論点として上げられた。農作物への補助金撤廃については、議論したとしても期間内に終わる見込みが薄いと多くの国が主張し、議論がなされなかった。ブラジル政府の再提案には、貿易の補助金や環境物品・サービス等について記載されている。(岸俊介・小野田真二)

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2所感

(1)いま「リオ+20」の夢と現実を見ている!~会議の終盤を前にして~

国学院大学 & グリーンエコノミーフォーラム

古沢 広祐

地球サミット1992から20年目、国連持続可能な開発会議(リオ・プラス20)が再びリオで開催されたことは、混迷を深める現代社会にきわめて意義深いものとなるはずである。だが、いまこの会合に参加しながら、かつて20年前に参加した地球サミットの熱気と盛り上がりを夢の世界のごとく思い浮かべつつ、重たいため息をつかざるをえない心境に落ちっている。

20年前地球サミットは、世界およそ170カ国からのべ4万人を越える人々が集う当時としては史上空前のイベントとなった。当時、政府間の本会議に並行して開催されたNGO会合(グローバル・フォーラム)に参加したが、そこでは国家利害や国境の壁を乗り越える、「地球市民の登場」とでもいうべき新たな時代の幕開けを強く感じることができた。今回は5万人の参加とのことであり、人数的には上回る規模とされる。だが、20年前のような心を躍らす雰囲気と比べると、郷愁もあるとは思うが、やはり当時の盛り上がり方とはほど遠いというのが実感である。

いま思えば、地球サミットで目指されたことは、まさに21世紀社会への人類的挑戦だったといえる。東西対立の冷戦体制が終わり、南北(貧困)問題と地球環境問題に対して人類が一丸となって立ち向かう新時代の幕開けを感じさせる雰囲気が漂っていた。当時は、EU統合が進展して米国一極集中からの脱却とともに、環境の世紀をリードする強いリーダーシップが存在感をもって力を発揮したのだった。

しかし、今回はそうしたリーダーシップは影も形もないかのように見えて仕方がない。欧州自体がギリシャをはじめとする財政危機に翻弄されており、米国自体もリーマンショック以来の金融破綻の後遺症に苦しんでいる。日本を含め先進諸国の苦境の一方で、急速に台頭しているブラジル、中国、インドであるが、国内の貧富格差や環境問題、社会問題などをみる限り、これまでの先進工業国を上回る矛盾を抱えたまま従来通りの発展幻想を抜けきれないでいるかにみえる。それは会議におけるG77+チャイナの発言や問題設定の置き方などにおいて感じられるが、地球社会の今後をリードするような気概などは正直なところ感じられない

実際、リオ+20の会議状況(準備会合と合意文書の進展)は遅遅として進まず、最終的な成果が見えてこない事態が進行している。とくに持続可能な開発・発展をめぐる道筋をつけるための2つの柱、持続可能な発展と貧困解消につながるグリーンエコノミーと、国連組織改革を含む国際的制度枠組みについては、いまだ検討課題が持ち越されたままである。何とか、最終文章までこぎつけたが、状況的には2015年に向けての中身の詰めがどう行なわれるかが次なる焦点となると考えられる。妥協の中での問題先送り的事態と言ってもよいのだが、多少なりとも前に向かう姿勢が保たれただけでも良いとするしかないのだろう。

いま、まさに夢から覚めて、厳しい現実の重さと大きさに圧倒されそうになりながらも、最後まで希望の光をともすべく会議の閉めを見守っていきたいと思う・・・・。

(2)リオ+20は企業にどのような影響を与えるのでしょうか

株式会社クレアン & グリーンエコノミーフォーラム

山口 智彦

今回、リオ+20にグリーンエコノミーフォーラムのメンバーとして参加しています。

企業にとって、地球サミットのような場で議論される「貧困解決」や「基礎教育の普及」といった事柄は自社の事業との接点が見つけにくいものだと思います。

一方、一度これらが「リオ+20原則」や「リオ+20宣言」というようなものになると、これらは屋根に降った雨が、雨どいを伝わって下りてきて国の法律になり、自社の事業を大きく左右するものになっていきます。

今回のリオ+20の主題は、持続可能な社会の像とそこへの道筋(「グリーンエコノミー」という名前が付きました)と、持続可能な社会を作るための具体目標(「SDGs(サステナブル・デベロップメント・ゴール)という名前が付きました)の二つであると言えるものと思います。

今後、このグリーンエコノミーとSDGsの骨子をお伝えし、それらがどのようなかたちで国の法律や制度になっていくのか、それには自社にどう関わっていくかを皆様と考えて参りたく思います。

(3)20年間の状況変化と、雇用・社会的保護・開発に関する合意進展

「環境・持続社会」研究センター & グリーンエコノミーフォーラム

足立 治郎

あまり注目を集めていないが、リオ+20で合意されるであろう重要な点の一つに、「雇用・社会的保護」がある。会議場では、労働組合・女性等のグループが、盛んに提言・ロビー活動を行っており、合意文書では、以下がうたわれる見通しだ。

・完全で生産的な雇用の促進

・全ての人々へのディーセントワーク(働きがいのある人間らしい仕事)促進

・特に、若者・貧困層の雇用の促進

・男女の雇用機会に対する平等なアクセス

・グリーンジョブの促進

・全ての人々へのソーシャルプロテクション(社会的保護)の提供の促進 等

これまで日本では、リオプロセスは「環境」を扱う会議と見る向きが多かった。しかし今回、「持続可能な開発と貧困撲滅の文脈におけるグリーン経済」が主要議題となったことが象徴するように、リオプロセスは、「開発」「貧困」「経済」を扱う会議としての色が強まっていると思う。

1992年から20年を経て、温室効果ガス排出量は中国が1位となり、人口10億人を超えるインドも含め、新興国の排出量の伸びの鈍化が大きな課題となっている。しかし一方で、新興国の一つ、ここブラジル・リオにも多くのスラムがあり、貧困が日常化している。

日本を含む先進国も、就職できない若者があふれ、高い失業率は、環境問題への関心低下の一因となっている。

「貧困」「雇用」といった課題と「環境」問題の同時解決を、いかに世界規模で実行していくのか。リオ+20は、そのための挑戦・試行錯誤の側面も有す。

「グリーン経済」は、貧困を抱え更なる開発を志向する途上国・新興国の不信感があり、交渉は難航し、ロードマップ等の合意形成は困難となった。しかし、SDGs(持続可能な開発に関する目標)は、プロセス開始が決定する見通しだ。上記したように、雇用や社会的保護に関する合意も進展する状況である。

こうした状況は、途上国の開発・雇用・貧困問題に正面から取り組むことなしに、世界規模で環境問題解決を前に進めることの困難を示唆している。

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3.編集後記

メールニュースの編集長をつとめさせていただきましたJACSESの金子と申します。リオデジャネイロには11日に到着し、12日から毎日会場へ通っています。

本会場は、パビリオン1~5とサイドイベントが行われるテントから成っており、とても広いです。会場内は様々な地域の人々で賑わっており、共通の問題意識と目標のもとにこれだけたくさんの人々が各国から集まってきているのだと思うと、感慨深いものがあります。サイドベントや会合などでは、主催者側の発表のみならず、質疑応答の場面に置いても熱心なやりとりが繰り広げられており、将来世界を憂いて持続可能な社会を実現しようとする人々の熱い思いが伝わってきます。もちろん、ただ熱いだけではなく、遊び心も顕在です。先日は、ジャパンパビリオンがある会場の前で、地球の被り物をしたパフォーマーからお茶目に“Let’s save the earth!”と話しかけられ、思わずカメラを取り出してしまいました。

また、本会場の入り口から少し入ったところの壁には、“The Future We Want”という言葉のもとに人々が思いを書いた紙やカラフルな絵が増え始めました。参加当初と比べ、本会合に向けて次第に盛り上がってきているのが感じられます。

今回の各国による交渉においては、各国の利害の不一致などにより話し合いが難航している場面も多く見られました。今後、人々の希望に応えるようなかたちで、各国がより歩み寄っていくことを期待したいです。

(JACSES 金子郁代)

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発行責任者:足立治郎

編集長:金子郁代、梶川由貴

*このメールニュースは地球環境基金の助成を受けて発行しています。

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