2016年03月31日
Ⅸ.SDGs推進に向けた各セクターの動き
●事業者の動き
SDGsでは、企業が、消費者も含めた様々なステークホルダーと連携し、SDGsの実現に向け積極的な取組を実施することで、SDGsの目標達成に貢献することが期待されている。企業はSDGsという大きな目標に基づいて各自意欲レベルを設定し、取組を実施することができる。既にSDGsと自社事業の関連性を理解し、動き始めている企業もいくつか存在している。
例えば、フードロス・チャレンジ・プロジェクト、(株)博報堂、(株)クレアン、国際協力NGOセンターが事務局となり「OPEN 2030 PROJECT」が発足している。同プロジェクトは、ゴール12(消費生産)を中心に、未来の社会をより良くするためのソーシャルイシューを見える化し、社会・企業・生活者の関係を新たな視座で捉え直し、イノベーションを生み出すための契機として活用するもので、様々なステークホルダーと協働しながら「事業開発コンサルテーション」「共創事業ラボ」プログラムを提供する。
●政府/省庁の動き
グローバルレベルでのSDGs推進に向け、日本政府は「人間の安全保障を理念とし、新たな開発協力大綱の下で、「質の高い成長」(包摂性、持続可能性、強靱性)と、それを通じた貧困撲滅を実現することを重視」する姿勢を示している。また、2030アジェンダの採択に合わせ、感染症の予防・対策および保健システム全体の強化を図る「平和と健康のための基本方針」と、教育分野の国際協力のための新たな戦略である「平和と成長のための学びの戦略」という二つのイニシアティブを発表した。
国内では、環境省が環境分野のゴール・ターゲットの実施促進のため、SDGsの実施に率先して取組む企業、市民団体、研究者、地方公共団体、各省庁等のステークホルダーが一堂に会し、お互いの事例共有・意見交換や、一般への広報を行うことができる公開の場(ステークホルダーズ・ミーティング:仮称)の設置を検討している。
●NGOの動き
グリーンエコノミーフォーラムでは、リオ+20以前から、グリーンエコノミー・SDGsに関連する国内外の取組状況等を調査・研究し、提言書・レポート・ウェブサイトを通じた情報発信・普及を実施してきた。また、各セクターで鍵となる人物を招聘した公開研究会・シンポジウムを開催し、政策担当者・事業者・NGO・研究者等との連携強化や政策提言を行っている。
途上国の貧困問題解決等に取組む70以上のNGOが参加する「動く→動かす」は、2012年から「ポスト2015に関するNGO・外務省意見交換会」を主導するとともに、「ポスト2015年開発枠組みに向けた5か条の提言」や、国際NGOセンターおよびグローバル・コンパクト・ネットワーク・ジャパンと共同声明「「2030アジェンダ」採択に際しての市民社会・ビジネスセクター」を発表している。また、「動く→動かす」が事務局となり、環境、ジェンダー、防災、開発資金、障害などの幅広いテーマに取組むNGOが参加する「ポスト2015NGOプラットフォーム」が設立されている。
●新たな国際的イニシアティブ
SDGsのゴールとターゲットの達成には、政府、市民社会、民間セクター、国連機関、その他の主体を集結させるとともに、国内資金動員、民間資金、国際貿易、債務持続性の確保など、あらゆる利用可能な資源を動員する必要がある。
近年、SDGsの推進に資する新たな国際的イニシアティブが次々に立ち上がっている。例えば、PAGE (Partnership for Action on Green Economy)は、リオ+20を受け設立された、UNEP、ILO、UNDPなど国連5機関の共同イニシアティブで、2020年までに20か国に対し、新たな雇用と技術を生み出すための国家グリーン経済戦略の構築支援を行うものである。
SDIP (Sustainable Development Investment Partnership)は、世界経済フォーラムとOECDを中心に設置されたBlended Finance型のイニシアティブで、カナダ、デンマーク、オランダ、米国、英国等の公的資金に加え、ゲイツ財団やシティバンク、三井住友銀行が参加している。今後5年間に1000億ドルの資金を動員し、途上国のインフラ投資促進を目的としている。
Eye on Earthは、アブダビ環境庁がUNEPと協力して立ち上げたイニシアティブで、地球観測に関する政府間会合、世界資源研究所、国際自然保護連合などが参画している。多くの科学者、政策決定者、民間人が質の低い環境データに依拠しながら、水不足・食料安全保障・気候変動問題などに取組むことで、不正確・非効率な意思決定に繋がっているという現実を踏まえ、これらの障害を取り除き、科学的情報へのアクセス・利用可能性を高めることを目的としている。
SDGsの効果的な推進には、こうした国連内外の新たなイニシアティブへの積極的な関与が一つの鍵となる。